http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012051702000093.html
あらかじめ時間外労働の上限時間が書き込まれた三六協定届に、店長の指示でアルバイトが署名する−。新入社員森美菜さんが過労自殺したワタミフードサービスでは、違法な手続きで、従業員に時間外労働させていた。会社から一方的に提示された労働条件を、受け入れるしかない従業員。労使対等とは名ばかりの実態が浮き彫りになった。
森さんが働いていた「和民京急久里浜駅前店」(神奈川県横須賀市)。この店の三六協定届には、労使協定を結ぶ労働者側の
代表は、「挙手による選出」と印字されていた。しかし、男性アルバイトは「協定届を見たことはないし、挙手で代表を選んだこともない」と打ち明ける。
「会社側から三六協定の説明を受けたことはない」。首都圏で店長や副店長を務めた男性(30)も、そう証言する。男性は同意した覚えのない協定届を根拠に、毎月三百時間ほど働いていた。ある現役店長は「全従業員の意思を確認する時間もない」と明かす。自分の店の時間外労働の上限を知らない店長までいた。ワタミによると、毎年の協定更新の際、店長が経験の長いアルバイトの中から代表を指名。すでに時間外労働の上限時間が記載された協定届を印刷し、アルバイトが署名をして本社に返送するやり方が常態化していた。
ワタミの辰巳正吉・ビジネスサービスグループ長は「大きな不都合やクレームは起こらなかったので、踏襲してきてしまった」と話している。
<三六協定> 時間外労働を例外的に認めた労働基準法36条の規定から取った通称。同法で定める労働時間は1日8時間、週40時間。この時間を超えて働かせるには、労使合意に基づき書面で上限時間などを定めた協定を結び、労働基準監督署に届け出ることを36条で義務付けている。協定にも月45と時間の上限はあるが、上限を超えて働かせられる「特別条項」もあり、労使の力関係で時間外労働は青天井になりうる。
(引用終わり)
別にワタミを弁護するわけではありませんが、いわゆる過半数組合の存在しない職場における「労使協定を結ぶ労働者側の代表」選出の実態は、多かれ少なかれこれに似たようなものだというのは、ちょっと労働問題に詳しい人なら常識の範疇です。「労使対等とは名ばかりの実態が浮き彫りになった」というのはその通りでしょうが、労働組合が存在しない職場では、実際の労使の力関係はもちろん、労使合意に至る手続きの踏み方でさえ「労使対等」が成立していることのほうが珍しいというのが実態です。あえて付け加えれば、労働組合が存在する職場であっても、真の「労使対等」を実現させるには、労使、特に組合側の相当な努力が必要だということも申し添えておかなければなりません。
誤解しないでほしいのですが、私は、ワタミの三六協定の手続きの不備は、労働組合がない職場であればどこでもやっていることなので、あれこれ騒ぐほどのことではないと言っているわけではありません。毎月三百時間も働かせていたのが事実だとすれば、明らかに常軌を逸しています。ワタミは批判されて当然でしょう。ただ、この問題はワタミを叩けばそれでOKという話ではないと思います。将来のある若い従業員を死に至らしめた事件の重さを考えれば、「悪者探し」にとどまらず、過半数組合がない場合の労働者代表制の在り方について、より本質的な議論を行うべきでしょう。私が言いたいのは、そういうことです。
ちなみに、連合は、すでに2006年に、この問題について「労働者代表法案」の要綱をまとめています。詳細は連合のホームページに載っていますので、興味がある方は以下でご確認ください。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/daihyou/data/20060615.pdf

